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林田カイロプラクティック院

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『セックスする脳』


本書(米山公啓、二松まゆみ『セックスする脳』メディアファクトリー、2008年8月7日発行)は脳を専門とする医学博士と恋人・夫婦仲相談所長による対談である。恋愛や欲情やセックスを脳の観点から分析する。男性(米山氏)と女性(二松氏)の対談でもあり、男性と女性の感覚の相違も理解することができる。

たとえば男性は視覚情報処理を司る右脳優位で、女性は言語や論理的思考を扱う左脳優位である。そのために男性はAVが好きで、女性は官能小説に興奮するという傾向の違いが生まれるとする(120頁)。感覚的に納得できる男女の相違であるが、脳の観点からも説明できることに驚かされる。

また、悲しみや怒りと記憶の関係について興味深い記述がある。「深い悲しみや激しい怒りなど、感情を強く動かされると、扁桃体が活動して一気に忘れない記憶にしてしまうので、怒りは一生消えない」(140頁)。これが被害者と加害者の意識のギャップになっていると考える。

一般に加害者は被害者の痛みを被害者ほど重大に考えない。私は大手不動産会社から不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされたが、そのお詫びは「ご購入者にご迷惑をおかけした」という軽いものであった(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』97頁)。一般の消費者にとって不動産が一生に一度あるかないかの大きな買い物であるという最低限の想像力さえ大手不動産会社は持ち合わせていなかった。

本書では被害者側に乗り越える精神を持たせる形でまとめているが、加害者側も加害者の想像する以上の痛みを被害者側が抱えていることを認識することが関係改善の第一歩である。「怒りは一生消えない」という被害者の重みを科学的にも示したところに本書の意義がある。

本書の最後で二松氏は女性から男性への「ここだけはわかっておいてね」というお願いとして、「女性も性欲はあるわけだから、ちゃんと抱いて欲しい」と語る(153頁)。女性からセックスレスの相談を受ける二松氏は、女性は性欲がないと誤解する男性が多いと指摘する。一方で性欲があると言っても男性の性欲とは異なるため、男性の感覚を押し通せば溝が深まるだけである。ここでも相手の気持ちを理解することが大切であると感じた。