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林田カイロプラクティック院
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『きょうだい メンタルヘルスの観点から分析する』


本書はメンタルヘルスの観点から「きょうだい」の問題を分析した書籍である。家族の問題では親子関係や夫婦関係に注目が集まりがちで、きょうだい関係は閑却されてきた。しかし、夫婦共働きの家庭などでは親以上に「きょうだい」と接する時間の方が長い子どももいる。それ故、きょうだいに着目した本書には意義がある。

本書の考察対象は兄弟姉妹を包含する。本書が「きょうだい」と平仮名で表記している理由も、この点にあると思われる。実際のところ、きょうだい関係に問題が起きている中には「男の子だから」「女の子だから」と親などから押し付けられたジェンダーに起因しているものが少なくない。

また、本書は「長男は○○」、「次男は××」という類のステレオタイプな決め付けを戒める。それらは星占いと同レベルである。「ひとりっ子」についても、「ひとりっ子」だから対人関係能力が乏しく社会性・積極性に欠けると結論付けることは偏見とする(84ページ)。親の保護が手厚いのは「ひとりっ子」に限らないためである。兄や妹という立場から結論を引き出すのではなく、個別具体的な家族関係から分析することが本書のスタンスである。

そのために本書では様々な創作事例を基に説明する。そこでは「きょうだい」の問題といっても純粋に「きょうだい」の間で生じた問題ではないことが分かる。親の偏愛など家族の歪みが「きょうだい」の問題を引き起こしている。故に本書は「きょうだい関係の問題を考える際には、それを家族全体の文脈の中でみていくことが必要」と結論付ける(201ページ)。

「きょうだい」とは同じ親から生まれた存在であり、良きにつれ悪しきにつれ、親の存在は非常に大きい。そのため、親の死は「きょうだい」関係の大きな危機になる。本書は「親の死、その後の遺産の処理などをめぐって、きょうだいの対立が起きると、その現実的な処理や対応の困難さだけではなく、心理的に潜伏していたきょうだい間の葛藤が復活して、事態を複雑化し、互いの敵意や憎悪に発展することも少なくない」と述べる(111ページ)。「二子玉川親方の死去に際し勃発した若乃花、貴乃花きょうだいの確執」(「はじめに」)が有名である。

本書では上記パターンの考察が薄いが、相続紛争が増加している近年では重要な問題であると考える。相続では他の「きょうだい」には到底受け入れられない「きょうだい」間の意識の対立が背景にあることが多い。日本国憲法が法の下の平等を謳い、戦後民法は均分相続を規定しているにも関わらず、未だに戦前の長子単独相続を当然視する意識が一部に残存しているためである。また、相続人の配偶者が相続に口を挟むことで事態を一層紛糾させがちである。それ故に家族全体の文脈の中で相続をめぐる「きょうだい」の葛藤を研究することは今後の課題になるだろう。