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林田カイロプラクティック院
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林田カイロプラクティック院



『見捨てられたがん患者さんへ』


本書は豊富な治療実績を有する医師が「がん難民」の救いとなる休眠療法について説明した書籍である。がん治療は手術、抗がん剤治療、放射線治療が三本柱だが、これら標準治療を使い切ると、緩和医療しか残されていない。緩和医療は症状を和らげることを目的とし、がん病巣への治療はしない。これは死を待つだけの状態で、このような患者を本書では「がん難民」と呼ぶ。

がんが進行・再発した重度の患者には手術や放射線治療は限られており、抗がん剤が治療に中心になる。しかし、抗がん剤は副作用が強く、心身ともにボロボロになってしまう。そこで休眠療法の意義がある。これは腫瘍の根絶ではなく、長期に渡り増殖せず、静止したままの状態を保つことを目指す治療である。がんに勝とうとすると、たとえ勝ったとしても過酷な治療でボロボロになる。それよりは引き分けを目指し、今生きている状態を継続させる考え方である。ここには発想のコペルニクス的転換がある。

一方で休眠療法の具体的内容はオーソドックスである。休眠療法では患者一人ひとりの体質や病状に合わせた量の抗がん剤で治療する。使用する抗がん剤の量が少なくなるため、副作用を抑制できる。

本書では休眠療法に効果があったことを実際の臨床例から紹介する。2人に1人は効果があったという(119ページ)。また、標準量では効かなかった抗がん剤が休眠量では反応したこともあった(130ページ)。がん細胞の増殖経路と抗がん剤の相性によって少量の抗がん剤でも効果を発揮するとの仮説が紹介されており(132ページ)、研究の進展が望まれる。

本書は一般読者向けに平易に説明しており、がん治療の構造的な問題点と休眠療法の利点を容易に理解できる。平易な表現にしたために複雑な問題が捨象されている可能性があるが、著者の主張は常識に照らして納得できる。たとえば抗がん剤の量を患者各人の体質や病状に合わせて処方することは、患者から見れば当たり前のことである。

むしろ本書の主張が標準から外れた異端扱いされているところに現代医学の硬直性がある。標準として定められた量しか処方せず、患者が標準量の副作用に耐えられなくなったならば治療を放棄する。これでは「がん難民」の発生は必然である。著者が孤軍奮闘しなくて済むような状況になることを期待する。