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林田カイロプラクティック院
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林田カイロプラクティック院



『いのちの恩返し がんと向き合った「いのちの授業」の日々』


著者の山田泉氏は元養護教諭で、乳がんの闘病体験をもとに「いのちの授業」に取り組み、マスメディアにも取り上げられた人物である。「いのちの授業」は重い病気を患っている人達や死期の近い人達の体験談を聞くことで、子ども達に生と死の意味を考えてもらう授業である。

本書は2007年3月に養護教諭を退職してからの生活を中心にまとめたものである。文章は詩、インタビュー、いのちの授業の記録、日記、対談、娘の手記と様々な形式で構成されている。

不治の病の闘病生活で死と向き合うというとサナトリウム文学を想起するが、そのような重苦しさは本書にはない。自宅療養とはいうものの、「いのちの授業」の出前にでかけたり、自宅を「保健室」として開放したり、フランス旅行に出かけたりと刺激的な日々を送っている。

これは著者の明るい性格のなせる業であるが、実際のところ、がんには痛みも伴い、苦しい筈である。精神論や楽天性だけでは如何ともし難い。それでも明るさを失わず、活動的な日々を送る著者に生命力の強さを感じた。

特に印象に残った内容は上野創氏との対談である。養護教諭ながら年間100時間以上の授業を行い、がん患者となってからは患者会を立ち上げ、いのちの授業が話題となった著者は、型破りで非常にユニークな養護教諭の筈である。

しかし、その著者でさえ採用4年目の頃の卒業式で、子どもの髪のゴムの色がバラバラな状態を見て、「あんないろんなゴムの色をしてていいんですかね」と発言したという(203頁)。日本の学校にいると、皆が揃って同じ色のものを身につけるのが自然と考えてしまう空気に染まってしまうと述懐する。

この対談では他にも日本の学校のおかしな点が挙げられている。例えば教師が一日中ジャージを着たままで、子ども達に美やお洒落を教えられるのか、と問題提起する。そのため、著者は綺麗な色の洋服を着て学校に行くように努めたという(207頁)。

また、大分県日出生台の米軍演習に反対している人の話を聞いた時は、子ども達にとっては米軍演習に反対することよりも身近な非合理に気付くことが大切と諭された。例えば6月1日や10月1日に一斉に夏服や冬服に衣替えするが、実際はまだ暑かったり、寒かったりする。それを変に思わないことが問題と指摘された(214頁)。

そして学校の問題は制度に起因するとしても、現場の教師の発想の転換や工夫によって大きく変えることができるとまとめる。このように本書のスコープは学校運営、学校教育全般に及ぶ。「いのちの授業」や保健室登校に関心がある方はもちろん、学校教育に問題意識のある方全てに一読を推奨する。